1000円が3万円に!?成功体験でハマる「負けを取り戻すためには、1発勝てばいい」自分では気づかないギャンブル依存症の危険【漫画家に聞く】

東京ウォーカー(全国版)

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1000円が3万円に!成功体験からギャンブルのおもしろさに目覚める!画像提供:(C)三森みさ/時事通信社

「借金を取り戻すためにはギャンブルで勝てばいい」と、適度なところでやめられないのがギャンブル依存症。最近は、オンラインカジノが主流でスマホで簡単にできてしまうこともあり、若者の依存症も増えているという。今回は三森みささんが描く「だらしない夫じゃなくて依存症でした」のなかから「ギャンブル依存症編」をピックアップする。


依存症は「回復できる」もの。苦しい環境を生き延びるための手段として依存しているなら、自分を罰さないでほしい


第三話:ギャンブル依存症(7)画像提供:(C)三森みさ/時事通信社

漫画家・三森みささんは、アルコール依存症の「母のお酒をやめさせたい」やカフェイン依存、ゲーム依存症などの啓発漫画を描く。特に、カフェインをやめたときの副作用などを描いた漫画がきっかけで、「依存症」をテーマにした本作を描くことになったという。今回は、ギャンブル依存症について話を聞いた。

【三森みささん】本作のメインは「アルコール依存症」ですが、企画の趣旨として当時、国で病状と治療法が正式に認可されている「薬物依存症」と「ギャンブル依存症」についても触れています。ただ「依存症」というのは、根幹はみんな同じ症状が出ているので、身近なアルコール依存症を軸にして描かせていただきました。

第三話:ギャンブル依存症(8)画像提供:(C)三森みさ/時事通信社


――ギャンブルで借金を抱えても、一発当たれば数十万程度なら取り戻せると、嘘に嘘を重ねてまでやめられないのがギャンブル依存症。自分の抱えている問題をギャンブルで解決しようとしますが、本人が「依存していること」に気づくことは難しいのでしょうか?

【三森みささん】依存症は、脳の本能的な部分の奥から出てくる欲求が狂ってしまう病気なので、理性的な思考と本能的な思考がごっちゃになって、見分けるのが難しいんです。経験上「自分は依存症かも…」と、しっかり認識できてる場合は、まだ初期だな〜と思います。病気が進行していくと「自分は依存症かも(理性)」「このままじゃヤバいかも(理性)」と考えていても、同時に「でもやめたくない(本能)」「◯◯の理由があるからやめなくていい(本能)」が出てきて、すべての思考が1つの脳みその中でごちゃごちゃになっていきます。どれが理性でどれが本能的な部分なのか、自分の頭の中だけで見分けるのは困難です。ですので、「本当は気づいているけれど、やめることができない」という病気だと思います。

第三話:ギャンブル依存症(9)画像提供:(C)三森みさ/時事通信社

――ギャンブル依存症ならではの特徴は何ですか?

【三森みささん】強いていうなら、アルコール薬物は薬理作用として身体に影響しますが、ギャンブルは薬物のように作用しないことです。そのため、明らかに酔っ払ったり、匂いがあったり、呂律の回っていないアルコール依存症と違い、「ギャンブルをやっていない」という嘘がつきやすく、ご家族や周囲への発覚が突然やってくると聞いています。また、とにかく借金のダメージが大きいので、痛みや損失が数値化されやすいところでしょうか。

第三話:ギャンブル依存症(8)画像提供:(C)三森みさ/時事通信社

――本作を描くうえで、施設や自助グループに行って取材をしたと聞きました。ギャンブル依存症になりやすい人の傾向について教えてください。

【三森みささん】確実に言えるのは、まずギャンブルをやったことのある人です。私はギャンブルはほとんど触ってこなかったですし、これから触らなければギャンブル依存症にはなりません。そして、それが若い時期からギャンブルの経験がある人です。すなわち「ギャンブルの経験が多くなるほど自然とリスクが高くなるんだな」という感じがしています。でも、それだけならまだ「遊び」「趣味」の範疇なのです。そこに人生でつらいことがあった時期に、いつも以上にのめり込んでしまった結果、病気になってしまった…という印象があります。楽しくてやってるうちに病気になった、というよりも、苦しみから逃れるために…という方の話ばかり聞いてますね。

第三話:ギャンブル依存症(10)画像提供:(C)三森みさ/時事通信社

――脱ギャンブルに取り組む回復支援施設や自助グループもありますが「ギャンブル依存症」は治るものなのですか?

【三森みささん】治るというより、「やめ続けることができる」という病気の認識です。ギャンブル依存症に限らず、依存症というものは「脳の報酬系の問題」だと言われています。この報酬系の機能を治療する薬が存在しない以上、病気になる前のようにギャンブルを「遊び」「ほどほど」といった感覚でできなくなるのが依存症です。ですので、依存症になったあとは、遊びやほどほどができないのだから「やめ続ける」ことで依存症によるトラブルや損失が出るのを防ぐという方が正しいと思います。

第三話:ギャンブル依存症(11)画像提供:(C)三森みさ/時事通信社

本作で伝えたいことは「回復できる」ということ。「多くの場合は、依存しなくてはならない苦しい環境で生き延びるための手段です。もしも現在進行系で依存しているなら、そんな自分を罰さないでほしいなと思います」と、三森さん。依存症というのは誰もがかかる病気であり、心の弱さや自制心の問題ではないのだ。


現在三森さんは、自身の性犯罪被害と虐待の後遺症を治療したあとの「トラウマ問題」に取り組んでおり、ルポ漫画「 〜トラウマ治療編〜 生きていくのは大変だ〜三森みさのプチエッセイ集〜 」をKindleで公開中。

取材協力:三森みさ(@mimorimisa)

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